最近、スローフードに関する問い合わせがかなり多くなって来た。その何れもが雑誌社からなのだが、いささか的がずれていると言うか考え違いをしているのか、情けなくなる話ばかりである。
「檀さん、今度スローフードの特集をするのですが、全国のおいしいものを取り寄せるにあたって、これはスローフードというものを推薦して頂けませんか」 とか、
「東京のレストランの中で、スローフードなお店を紹介して下さい」
なんていう、馬鹿馬鹿しい話ばかりなのである。また二次加工品メーカーから問い合わせがあり、
「スローフードの新しい組織を作りたいのですが、一つ御指導頂けませんでしょうか」
と言った腹の立つ話もある。商品の売り上げがこの不景気で落ち込み、その埋め合わせをスローフードに託つけて伸ばそうという目論みらしい。
だったら、本当においしい商品を堂々と作り、それを世に問えばこれは絶対売れる、と僕は思う。そんな努力を忘れ、スローフード運動が盛んになってきたのに目を付け、あわよくば便乗しようという魂胆が見え見えである。
これは、我々消費者にも問題があるのだ。何が旨いか、何が安全な食べものかを、御自分の価値基準を設けて判断して頂きたい。確かにリンゴやミカンやイチゴのようなものは、見ただけではどれが安全であるか、より低農薬で作られているかさっぱり分からない。だとすれば、より姿かたちの良いものを選んでしまうのが、当然の成りゆきであろう。
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