「いわしまるごと」って食える範疇にあると思いますが、今回は、「いのししまるごと」を食べる男達の物語でございます。

福井県の池田町という山奥に、山の会と呼ばれるおっさん連中がいて、みんなでキノコを採って、毒きのこかどうか、判別するために、疑わしいキノコは、とりあえず食ってみる、などという無謀な根性だめしを大人になってからも本気でやったりしています。そのわりには文化庁長官から表彰されていたりと、結構おちゃめな人たちの集まりです。

最初に会った時などは、いきなり蜂の子喰うかという話になって、冷蔵庫の中から巨大なビニール袋に包まれた物体がおもむろに出てきて、中に入っていたどでかい蜂の巣を真っ二つに割って白い蜂の幼虫をつまみだし、一言「これがうまいんにゃー」

食べようかどうか躊躇していると、メンバーの一人「てかおちゃん」が、「都会の人はいつもお上品なもんばっかし、喰っとるで、こんなもんは、食べられんちゅう訳やの!」とか言い出したので、取り敢えず勇気を出して食べてみると、これが意外といけまして、調子に乗ってきて、「なんだこんなものぐらいで」なんて思っていると、今度は、一番おいしいのは、これだとか言って、半分成虫になりかけてる奴が出てきた時に、さすがにこれは無理です。なんてはっきり言ったら「都会のもんはそうやって田舎のもんを馬鹿にするやろ〜」ってきたから、がまんして食べたら、これはこれでバター風味でおいしかった訳です。

で、ついこの間、遊びに行った時には、目の前でいのしし一頭さばくっていう話になって、ぼたん鍋食べたといっても、皿の上にさばいた後のしし肉が乗ってるだけを喰ってるんじゃ、だめらしく、毛皮を丁寧にはいで自分が食べたい所の肉を自分で切り取って焼いて喰うのが礼儀だ! っていう話になってしまいました。

礼儀知らずの私ですが、是非そんな礼儀ならいつでもおそわりたいと思う今日この頃のお話でした。


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