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●今月の山賊亭のテーマを[熱々のきりたんぽ鍋]と定めてから、それを作って食べる準備に取り掛かった。言うところの「泥縄式」である。秋田の山からの帰り道、以前に一度だけ、ごく観光的な店で〈きりたんぽ鍋〉を口にしたことがある。そいつは腹立たしいほどに“観光地的”な代物だった。だから今回、自らもうすこし増しな鍋を作り、食べて、そんでもって書く……という心積もりなのだ。

▲食材を買いに出掛けた。先ずは〈比内地鶏〉探し。何分埼玉の田舎暮らし故、近所にそんなものを扱う店がおいそれとは見つからない。半日掛かり、六軒の店を巡って漸くお目当ての品に出合った。腿肉と手羽。モツ関係は無かったけれど、ダシをとるガラもゲットしてほっとする。この場合、比内の鶏無しじゃ話になりませんから……。他に牛蒡・芹・葱・結び白滝・笠の直径が四〜五センチに育った滑子・榎茸など――まあ、こんなところでよしとする。念のために(お手本用に)たんぽの市販品も追加した。米はわが家では常用の〈秋田こまち〉をそのまま使った。

■鍋にガラを放り込んでダシを取る一方、ご飯を擂りこぎで突き、半殺しにしてたんぽ作り。序に〈だまっこ〉も作っておいた。こいつらを遠火でじっくり時間をかけて焼き上げる。土鍋に材料を順序よく入れて出来上がりだ。「秋田っ子にご馳走しても大丈夫」と自画自賛した。比内の鶏が旨いのだ(並の鶏が食いにくくなる)。欲を言えば囲炉裏を囲んで大鍋でやりたい。燻りがっこも欲しくなった。たんぽは囲炉裏の灰に立てて炙るための形状で、そうでなければ串差しにする必要がない。だまっこでも充分であることが分かった。


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