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●晩秋の低い山をぼそぼそと歩く。私流の(山関連の)調べものをする時には、単独か、あるいはごく気心の知れた友人との二人歩きが多い。また、そんな山歩きを大変好ましく思っている。日が翳り、膝小僧までの深い落葉を急ぎ足で蹴散らしながら下る時など、前方に黒々シルエットとなって転がる大きな朴の葉が、時にうずくまったクロスケに見えたりして、思わずギクリとする。いくら大振りとは言え高々30〜40センチ程のもの。(バナナの葉ではないのだから)目の悪い私とは言え、それが山の主に見えてしまうなんて、ほんとにどうかしている。

▲朴の葉は、オフホワイトの花を付ける万緑の季節よりも、枯れて地に落ちてからの方がよく目立つ。気紛れに、形のよい何枚かを持ち帰ることもある。塩水で洗って、軽く「押し葉」にして保存しておく。飛騨高山風の焼味噌をたのしむためである。朴葉味噌――まず用意するのは飛騨コンロに炭火。件の朴葉をちょいと湿らせて金網にのせる。辛口の味噌に気分で酒・味醂を落とし、たっぷりの刻み葱に卸し生姜を少々。さらに山採りの怪しげなキノコなどをスライスして、(大丈夫かな? 大丈夫だよな! などと呟きつつ)交ぜこぜにする。やがてえも言われぬ薫りが立ちのぼる。本日の美禄は友人差し入れの埼玉の〈神亀〉。焼味噌も酒も旨いじゃあーりませんか……。仮初めの仕合わせ感に浸るワタクシであります。酒の後は(この場合)やはり〈焼きおにぎり〉と洒落たいものですネ。〈朴葉ずし〉や〈朴葉もち〉は、薫り高い青々とした生の葉を使うらしい。残念ながら、私はまだその手のご馳走を頂いたことがない。


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