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●しみったれの儂は、例えば浅蜊などの小貝――捨てるだけの殻ばかり目立つやつ――はゴミまで買わされるようで、いま一得心が行かない。蚕豆も嵩ばる莢の他に豆の薄皮まで捨てるはめになる。枝豆にいたっては、莢どころか何の足しにもならぬ枝葉・根っ子まで付いてくるのである。言語道断である(かな?)。小粒なくせして〈大豆〉だなんて名乗り、しかもお前はその未成熟品に過ぎないではないか――。そう思いつつも、袋詰めよりは鮮度を確認しやすく、甘味と香りに勝る枝葉付きの方を、儂はつい選んでしまう。(ひょっとして、枝付きだから〈枝豆〉なのか?)。剥き身にされた枝豆を摘まんでも、ビールの味は冴えないかも知れない。

▲とにかく枝豆に目がない。子供の頃からである。一莢三粒入りばかり漁って、放っておけばバケツに一杯くらいは行けた。馬鹿食いしてはいけない。通常はドンブリに山盛り一杯で我慢しなければならなかった。いまは、もちろんそんな食い方はしない。中鉢に枝付きで飾り、目と口で静かに味わう。少量ずつではあるが、逆に摘まむ回数が多くなった。時を選ばず、日に何度も、自室と冷蔵庫の間をピストンすることになる。「一莢に二粒が正しい」という品種をよく頂戴するので、もう三粒入りに拘わることはない。

■時には豆を擂り潰して塩・砂糖で調味した、いわゆる〈ずんだ〉をつくる。焼き茄子や餅の和え衣にするわけだ。しかし、山賊といたしましては、枝豆なんちゅうもンはプチプチと弾きながら同時に塩味と莢のテクスチャーを唇と舌に感じつつ、冷たすぎるくらいのビールを少し乱暴にグビグビッとやるのが一番お似合いかと思いますネ。


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