市内の八百屋やスーパーを覗くと、様々なリンゴが並んでいるのに気づく。ある店で数えてみたら、七種類もあった。赤、淡緑、青、赤と青のまだら、といった具合で、にぎやかな店先である。
一個から買える秤売りだ。またビニール袋入りの徳用パックもあるが、その大きさたるや、枕ほどもあり、二十個ほど入っている。すべてここの特産である。日に一個のリンゴで医者知らず、という言葉があるが、ノルマンディーでは医者が少ないであろうか。
日本でいえば、青森辺りにあたるのがこの地方だが、少し違うのは、リンゴを利用した、世界的に有名な品々があることだ。三つほど挙げてみたい。
まずは、ポークのノルマンディー風という料理がある。ポークのオーブン焼きに、焼きリンゴが添えられているのが特徴で、これをノルマンディー風という。
ポークの味付けには、リンゴでつくられたブランデー、カルヴァドスを使う。ノルマンディー地方のカルヴァドス地域で生産されたものだけ、これを名乗ることができる。
ぶどうから普通のブランデー、コニャックなどができるわけだが、リンゴのふんわりとした香りがするブランデーも、食後酒として捨てがたい。
フランスでは、カルヴァドスを食中酒として飲むこともある。肉料理の前にちびりとやり、食欲を増進させるのだ。胃に通路の穴を広く開けようというわけで、この時のカルヴァドスは「ノルマンディーの穴」とよぶ。
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