僕は、東京のはずれの練馬区に住んでいるが、七草の日に家の周りを散歩すれば、何とか自然の中で五草は見つけられる。簡単なのは、なずなと呼ばれている『はこべら』だろう。次に見つかりやすいのが、ごぎょうではあるまいか。これは『母子草』であり、夏の間は、いつの間にかプランターに生え、植えた花の邪魔をして手を焼くことがある。しかし、姿勢のよい姿に黄色い渋い花を咲かせるので、小さな一輪挿しに活けると中々よい。
セリは、池の近くのわき水があるところや、ちょっと足を伸ばして田んぼのあぜ道の辺りを探すとすぐに見つかる。ほとけのざというのが、少々厄介だ。というのは、実際に佛の座という赤っぽい葉っぱの草がある。だが、これは食べられない。昔の人がほとけのざと呼んでいた草は『コオニタビラコ』といって、タンポポによく似た野草である。これも、田の付近には結構自生している。この草は、さっと湯通しをして胡麻和えや白和えにすると、かなりおいしい。韓国でも、確かキムチにして食べていた。
中々自然界で見つからないのが、すずなとすずしろであろう。つまり、カブとダイコンである。全くないとは言わないが、見つけるのにはかなり時間がかかるだろう。とは申せ、デパ地下やスーパーでも、カブは葉つきのものが手に入るが、ダイコンは結構難しいかも知れない。ただ、最近はダイコンの摘み菜が売られていることもあるから、これを見つけたら買っておくとよい。味噌汁に入れても旨いし、塩揉みにして細切り昆布と合わせると、最高の漬け物が出来るだろう。
ともあれ、七草を手に入れて、それぞれを細かく刻んで粥に加える。ただし、はこべらは簡単に見つかるからといって多く入れぬ方がいいだろう。土臭くて閉口する。ダイコンとかカブの葉、そしてセリを多めに入れると、食べ疲れた胃を洗い流してくれるような爽快な気持ちとなる。本来の正月(旧正月)は通年約一月くらい遅い。だとすると、少しではあるが日が長くなっているので、野の七草も見つけやすいのかも知れない。今年の七草の日は、閏月があるから二十八日といささか早い。でも、旧暦に合わせ七草粥を食するのも一興ではあるまいか。
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