どうやら、野菜というものは雨が降らぬとどうにもならないものらしい。また、雨が降り過ぎても、葉が育たぬらしい。と、まあ、当たり前のことなのだが、デパートや近くのスーパーの野菜だけに頼っていると、こんな単純なことさえ分らなくなってしまう。挙げ句の果てには、この頃野菜が高いだとか出来が悪い、と文句ばかりつけがちだ。
僕は、東京の町外れの練馬に住んでいる。幸いなるかな家の周りにはわずかに畑が残っており、農家の方々は懸命に野菜を作っておられる。だから、少しばかりだが、野菜の生育状況を自分の目で確かめられる。もっとも、その八割くらいがキャベツで、年がら年中キャベツばかり見ているような気がしてならない。
だが、天気のよい日に自転車に跨がり、近くを走ると、結構無人スタンドがあることに気づく。キャベツとダイコン、長ネギ、白菜、ホウレン草、小松菜等々……。大体、一束百円から二百円。スーパーよりは安い。嬉しいのは、安さばかりではない。新鮮だから、シャキシャキとしていて、おいしいのだ。という次第で、我が家で消費する野菜の大半は、地元産の新鮮野菜なのである。
この野菜だが、今はほぼ一軒の農家の野菜に限定している。というのは、この農家は有り難いことに低農薬と有機栽培をかなり真剣に考えておられるからである。また、僕みたいな素人の意見も聞き入れて下さる。例えば、
「キャベツ畑にはフェロモンを置いておくと、虫がつき難いらしいよ。消毒の回数もかなり減らしてもいいらしいし…」
聞きかじりの意見が、何と一週間の後には実行されている。
「葉もの野菜は、ハウスの中だと虫がこないから、消毒は要らないそうですねー」
またまた、二ヶ月後には百坪位のハウスが出来、絹のような水菜(京菜)の栽培が可能になった。最近は、初ものの野菜が採れるようになると、電話をして下さるようになった。こうなると人情として、他所の野菜は食べ難くなってしまうのは当然ではなかろうか。
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