店主敬白・其ノ拾


お酒のおいしい季節が続きますね。

最近は、各酒造メーカーの宣伝等に出てくる酒の言葉も「貴醸酒」「山廃*もと仕入」「吟醸古酒」等々難しくなってきた。そこで自分用に自作のメモを作ってみた。今日は、そのメモをちょっと公開してみます。間違っているかもしれませんがご容赦下さい。

まず、日本酒に限らずアルコールの飲み物は全て酵母という菌類によってアルコールになっていく。面白いことに日本人が酵母の事をはっきり知ったのは、明治九年に来日したドイツ人化学者コルシェルトが日本酒の酵母を発見してからである。それまでは、目に見えない菌の働きを経験によって操作していたのである。酵母は、糖類をアルコールと炭酸ガスに変える働きがある。それではその糖はどうして出来るのかと言うと、又、菌が出てくる。麹(こうじ)である。

麹菌は、米のデンプンを糖に変える。

●まず、米を蒸して麹を働きやすくする。次に麹菌の種をつけ麹を作る。これを製麹(せいきく)という。

●次に麹に蒸した米と水を加えて、酵母(しゅぼ)を増殖させる。これを酒母または*もと立てという。この酒母をもとにさらに麹と蒸米と水を加える。これを醪(もろみ)という。

●さて、これから日本酒独特の製法が始まる。麹は糖を作る。その糖を酵母がアルコールにする。この二つの発酵が同時に並行して次々と行われる。

●これを袋で圧搾(しぼり)して、お酒と酒粕にわける。上槽(じょうそう)または槽(ふな)かけという。搾りたてのお酒は白濁しているので十日程静かにさせて、濁(にごり)を沈殿させる。これを滓(おり)引きという。さらに濾過させる。六〇〜六五度に加熱して殺菌する。これを火入れという。出来上がりです。
さて、酵母はどこから入ってきたかというと、稲わら等から蔵へ入って増殖しているのです。それが酵母タンクに入り込むのです。しかし、酵母にも優秀なものとそうでないものがある。明治三十七年には、国税庁醸造試験所が優良酵母の開発に乗り出している。こうして優良酵母が市販されるようになった。近年は更に優秀な酵母探しが激化し、良い酒が造られている。
さて、次のメモに行く。米の問題と精米である。食べておいしい米が酒造りに良いかと言えば、それは適切でない。

●酒造りには相応の酒造好適米がある。二百種類はあると言うが、そのほとんどは、以下の銘柄である。

●最高級と言われるのが「山田錦」である。出荷量一番は「五百万石」である。東北地方で有名なのが「美山錦」である。この三銘柄で全国の酒米の四分の三を賄っていると言えば、他の米は覚えなくても良いのでは。一つ付け加えるならば、雪解け水をかぶった苗が良いと言う。また、酒造好適米は背が高いという。

●精米は米粒を削る事であるが、酒造の米は、中心の部分程成分が良い。そこでまわりを削るのである。良い酒を造る為なら米粒半分以上削り取ってしまう。さて、ここまで酒造りの過程はだいたい入っている。そこで、これを分類して表にする。下表のようになる。さらに分類をすすめる。


○生酒(なまざけ)……火入れを一切行わない。普通は二回行う。

○生貯蔵酒(なまちょぞうしゅ)……貯蔵前の火入れは行わず、瓶詰め前は行う。

○吟醸古酒(ぎんじょうこしゅ)……吟醸酒を二〜三年以上貯蔵してまろやかさを出す。

○長期熟成酒(ちょうきじゅくせいしゅ)……五年以上貯蔵し、酒を熟成させる。

○貴醸酒(きじょうしゅ)……仕込み時、水の替りに半量の清酒を用いる。

○濁り酒(にごりざけ)……圧搾(しぼ)りの時に目の粗い布でこした濁ったままの酒。

○原酒(げんしゅ)……普通はできあがった酒に加水するが、しないもの。一六・五度以上。

○樽酒(たるざけ)……樽に一定期間貯蔵して木の香りをつけたもの。

○生*もと仕込(きもとじこみ)……酒母を造る時に天然の乳酸菌を取り込んで雑菌を殺菌する。昔から行っている行程で、米を摺(す)る。これを山卸(やまおろし)という。酸を含んだ濃い味になる。

○山廃*もと仕込み(やまはいもとじこみ)……生*もと仕込の作業のうち、山卸を行わないので山廃と言う。

さあ、ここまできたら、日本酒の分類はだいたい終わりです。後は産地。その土地々々の人柄と同じような酒柄を感じられるかもしれません。
以上の事柄を知っていれば、たいていの酒をラベルから、どのような酒か読み取れるはずです。酒の銘柄を覚えるのは、数は多すぎて大変です。でも、ラベルが読めるとそのお酒の事がだいたい分かって楽しいものですよ。

*もと=酉へんに元



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