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店主敬白・其ノ拾伍
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アサヒ蟹を初めて知ったのは確か小学校三年生の頃だった。この年の夏、江ノ島の片瀬海岸の網元の家で私達一家はひと夏を過ごした。この網元の家には私と同年ぐらいの子供がいて、よく海で一緒に遊んだものだ。早朝、海岸へ行き、貝ひろいなどして遊んだ。ほとんどがシッタカという貝で、茹でておやつにしてもらった。時には地引き網もしたが、この際に見たのがアサヒ蟹だったのである。大人の手のこぶしほどの大きさだったように思う。網元の家におばあちゃんもいて、このおばあちゃんの言うことには、「このアサヒ蟹は小さいね。大きいと美味しいんだよ。この大きさだと味噌汁用だね」と説明してくれた。地引き網をしていて驚いたのは大きなヤドカリが獲れることだ。これもおばあちゃんが茹でておやつにしてくれた。子供たちで取り合った思い出があるので、きっと美味しかったのだろう。 ![]() 私達は、珍しいものでも、多くのお客様に食べて頂きたいから、やはり適正価格の仕入れをしたい。こうして、仕入れを諦める事も多々ある。アサヒ蟹は妙な愛敬をもった蟹で、ずんぐりして、丸い甲羅に厚みがあり、蟹でありながら、横歩きの出来ない珍しい蟹である。前へ前へと前進する姿はかわいいものである。そんな未練をずーっと引きずっていたが、最近そのアサヒ蟹が、時々、ほど良い値段で入荷するようになった。どこから入荷されるのかと聞くとオーストラリアから活きたまま空輸されるという。唯、入荷が不定期であるので、扱いにくい商品であるが、またこの蟹に会えるのは本当に嬉しい事である。さらに、以前、鹿児島で仕入れしていた物より大きく、味も旨味が濃いから言う事なしである。 今や、日本で失いかけている珍味、美味が世界中から日本に集まっている。そして、日本人が珍味、美味としている食材、例えば、あんこうの肝、ナマコ、マグロのトロ、海苔、ウニ、山葵、等々を世界中のシェフ達が注目しているのも事実である。限りある資源、これからは、世界規模で考えていかなければならない時代がとうとうやって来てしまいました。 |
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