家族ぐるみでお付合いさせて頂いている御夫婦から、「これでもう三年目だけど、今年行かなかったらもう誘わない」と言われてしまった。以前より東北三大祭を見に行こうと言われていたのだが、つい返事が遅れてしまったら、予約もとれなくて延び延びになっていた。昨年も春から言われていたので行きますよと即答した。
予約の手配はもうそっちでやってくれという事で、さてさて、どうしたものかと言う事になった。行ったという人に聞いてみると、とにかく旅行社のパックで行くのが良いとの事であった。個人旅行で行けば人出が多く、良い席で祭を見る事もできないし、ホテルの予約もまず取れないだろうし、交通もままならないし、予期せぬトラブルも多々あるのではないかという。
私は若い時から、日本全国ほんとうに良く旅行したが、ほとんどが仕事がらみで、全て個人旅行であった。国内のパック旅行というのは実は初めてであると思う。
これも良い経験と思い、早速手配してみた。パック旅行というのは不思議なもので、パンフレットを色々見て、これで良いかなと決めてしまうと、あとは当日近くまでスッポリ忘れてしまうのである。個人旅行だと、地図を見ながら行程を決めたり、時間を調べたり、ホテルを探したりとやる事が多々有るから、旅行プランはだいたい頭に入るのだが、その手間が全くないから、頭に残っているものはほとんどない。
当日、東京駅の集合場所へ行くと、旅行社から三沢行きの切符を渡された。後は添乗員の言うとおりにしていれば良い。三沢からはバスで青森へ向かう。三日間同じバスだから、荷物も必要なもの以外は置きっぱなしでも良いと、何とも楽なものである。
青森に着くと、少し自由時間があった。ずいぶん前であるが、あるレストランの立ち上げの手伝いで、青森には二ヶ月位滞在した事があるので、さすがに懐かしかった。しかし、当時よりずっとビルが増え、どこがどうだったかはあまり思い出せなかった。駅寄りの路地にまあまあ広い魚市場があって、その市場が好きで当時は毎日のように顔を出したものだが、その辺も大きなビルになっていた。
私が、昔この辺に魚市場があったと皆に言ったところ、「地下市場」って書いてあると言う。本当だと皆と地下へ行ってみて、びっくり。昔とほとんど変わらないたたずまいの市場が、地上から地下に引っ越していたのである。置いてある商品も以前とほとんど変わりなく、魚はおどろく程鮮度が良い。それに昔と同じように激安である。私の興奮が移ったのか、皆も興奮気味に市場の中をぐるぐると歩き回った。試しにうにを一箱買い、醤油を借りて皆で食べてみた。思わずうなる程においしい。東京ではこの味は味わえないと誰かが言ったが、全く同感である。製品として、手が加えられてない独特の味である。
皆それぞれ色々なものを買った。便利なもので、期日を指定した日の魚をクール便で送れるのである。私はその日の発送で、毛蟹やたら子、夏がき、うに、ふじつぼ等を私共のレストランの調理場へ送った。明後日の夕方東京駅で解散だから、皆とその日の夕食に食べようと思ったからである。ふじつぼを買ったのは、おいしいと聞いていたのだが、食べた事がなかったからである。それにガシャガシャ音を立てて出たり入ったりする程元気も良かったからだ。
夕方六時からねぶたは始まった。桟敷席も良い場所であり、パック旅行の良さである。祭の始めに巨大太鼓がズシーンズシーンと鳴ると、もう、わくわくとした興奮状態におちいった。翌日は、角館を見学して秋田市に入った。角館は、佐竹氏の武家屋敷が多く残っており、見ごたえのあるところである。昔の人はこんな素晴しい町や家に住んでいたのかと感嘆させられた。夜は秋田市内で竿灯を楽しんだ。
ねぶたにしろ、竿灯にしろ、この祭の良さを文章にして書くのは恐れ多い程に魅力がある。今回来てみて本当に良かった。
翌日の夕方、私共のレストランに皆で集まった。もちろん私が青森から送った食材を食べる為である。ところが、調理場では私からの差し入れかと思って、もう食べてしまったと言う。わずかに夏がきとふじつぼが残っていただけであった。とんだハプニングがあったが、楽しい旅であった。
すっかりパック旅行に味をしめた私は、今年二月、同じ様なメンバーが北海道の流氷見学ツアーに行くというので、飛び入り参加した。温暖化現象で流氷はやはり来ていなかった。帰る日、バスで市場に行く買物ツアーがあった。皆、私に何を買ったら良いかと聞くので、「私なら何も買わない。今は休漁期だし、野菜も作れない時期だから値段も高いし、品物も悪い」と言ったら「買い物は旅の楽しみだから、さめた事言わないで」と言われてしまったが、我々のグループだけはほとんど買物をしなかった。でも、丹頂鶴や摩周湖は良かったですよ。 |
