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農業というのは、本当に大変だろうと思う。ちょっとした天候不順により、葉ものの野菜の出来が悪くなり出荷が不可能になったり、出来過ぎてしまうと今度は品物がだぶついてしまい、挙げ句の果ては畑を野菜ごとトラクターで潰してしまったりする。それに比べると、我々のような素人は虫に喰われてしまったとか、肥料の加減で出来が悪い程度の軽いものでしかない。

とは申せ、種を蒔いたり苗を植える時などは、頭の中では売られている野菜のイメージより数段上のものを描いてしまう。が、悲しいかな、育ちゆく野菜の姿はかなりかけ離れたものとなるのが常。特に、キャベツとか白菜に至っては、情けなくなるのが現実だ。こうした野菜は、種から育てるのにはかなりの技術と根気が必要。そこで、一株百円とか二百円の苗を買って来て植えるのだが、数カ月後に収穫した野菜は贔屓目に見ても貧弱そのもの。しかも、同じ頃に家の近くの農家の無人スタンドを訪れると、それは見事な白菜やキャベツが一個百円で売られているのである。

正直に我が菜園の報告をすると、キャベツは虫や鳥に啄まれて壊滅状態。辛うじて白菜が形になってはいるものの、三〜四株を合わせてもお百姓さんの一株よりも軽い。当初の予定では、白菜の漬けものを作り、余った白菜でキムチ、何てことを考えていたのだが、甘い目論みであったことを実感する。てなことで、気を取り直してお百姓さんの手による立派な白菜を五株ほど購入。外側の少し汚れた葉を取り除き洗う。白菜は四つか六つに割り、朝から晩まで天日に晒し軽く水分を飛ばしておく。

Kubota Tamami

次は、天然の塩を白菜の重さの三〜四%、つまり十キロの白菜に対して三百グラムくらいの塩を使うのだが、漬けものの味だけは塩の善し悪しだけで大いに異なることを認識して頂きたい。僕はフィリピン産の石蔵の塩を用いているが、この辺りは粟國の塩でもフランス産の塩でも構わない、使い慣れた安くて旨い塩で漬けものの味が確定する。さて、天日に晒した白菜は、一リットルに大匙二〜三杯の塩を加えると海水くらいの塩水になるので、この水で全体を軽く洗うのだが、特に根元の重なっている部分も拡げながら水を通す。洗い終えたら、水は捨てて残った塩を株の数に等分しておき、丁寧に根元の白い部分だけにまぶしていく。塩を施したところで、白菜の切り口を上に向けカメかボウルに並べ平らなふたをしてレンガ二個分くらいの重石をして一晩置く。

と、翌日はかなりの水が出る筈。この水は思いきりよく捨てる。次に、刻んだ柚子と出汁昆布(この量は入れ過ぎぬ程度、チラチラと確認出来る位)を、これまた丁寧に根元の部分に挟みキムチを漬ける要領で上の葉で包むよう丸め、三個に一本程度の鷹の爪をまるのまま加える。もし、辛めがお好きならば輪切りにしたものを柚子と一緒に加えればよいだろう。今度は出来るだけ縦に深い樽やカメに丁寧に並べ置き、その上に出汁昆布の出汁を取った後の残りを冷凍保存(我が家では出汁を取った後捨てずに保存する。これで佃煮を作ったり、漬けものに利用する)しておいたものをかぶせる。最後に、前日切り離しておいた白菜の少し汚れた部分を蓋のように敷いて、ほんの少々残しておいた塩を振りかけ蓋をして重石を乗せ、四、五日置くとおいしい漬けものの完成。ただし、保管するのになるべく冷暗所に置くことが肝要。最近は暖冬だから直ぐに酸味を帯びる。

てなことで、今年こそ自家製の白菜で挑戦してみたいと、今から考えている。



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