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昨年の春から参加している体験農園も、二年目となるとかなり余裕が出て来るもの。今年は例年になく天候が不順ではあるが、植物の生命力の偉大さにはほとほと感服する。春先(種まきや苗の植えつけ時)は寒くて、一時はこのままだと全滅かと思われた野菜達は、出遅れはしたものの平均気温が十五度以上になると面白いように育ってくれる。トマトは顕著なもので、芽欠きという枝の二またのところに出る脇目を摘むのだが、一週間も放っておくとどれが本枝なのか分らなくなる。また、摘み取った脇目をいたずらに地面に挿しておくと、あっという間に成長し抜くに抜けないジレンマに陥る。

Kubota Tamami
ともあれ、六月の半ば辺りからは収穫に追われ、キュウリが四本、茄子が二本の苗を植えたのだが、一旦実を付けはじめると夫婦二人の暮しでは食べ切れぬ量の収穫がある。他にも、二十日大根、インゲン、夏大根、ジャガ芋、レタス等が一斉に食べごろとなる。そうなると、朝から晩まで野菜料理のオンパレード。まるで山羊かウサギになった感じで、ポリポリガシガシと音を出しながらの食事となり、終いには食事とはいかにエネルギーを消費するものかと笑い出す始末。それでも、野菜効果が如実に出るものなのだろうか、便通がすこぶるよろしくなり女房殿は大喜び。人間はやはり草食動物であったと、改めて気付く次第である。

トマトに関しては、今のところミニトマトがほんの少し色付いている程度だが、キュウリやズッキーニは驚くほどの早さで成長する。梅雨の長雨で三日も畑に行かないと、へちまと見紛う大きさに成長し、農園のメンバーの中にはこれを捨ててしまう人が出て来る。確かに、大人の腕くらいの太さのキュウリやズッキーニは、どう間違っても日本のスーパーや八百屋さんでは売られてはいない。韓国に行くと、キュウリはさすがに見当たらないけれど、ズッキーニはかなり太いものが並んでいる。このズッキーニだが、多くの方々はみかけから瓜の仲間と思い込んで居られるだろう。が、残念ながらカボチャの仲間である。ということで、韓国でテンジャンチゲを食べるとこのズッキーニが必ず入っている。面白いもので、かなり太いものでも熱を加えることにより、信じられぬくらい柔らかになり旨い出汁もでる。そこで、試しにと味噌汁の具にズッキーニを用いてみたら大正解。油揚げや豆腐との相性も抜群によい。冷静に考えてみるに、日本の味噌汁にコチュジャンと粉唐辛子を加えれば、テンジャンチゲになってしまうじゃないか。

このズッキーニ、豚肉とも合うし鶏肉にもよく合う、豚のスープの作り方を記そう。鶏肉の場合は、手羽先がよいだろう。豚のバラ肉は塊を買って来て一口大に切る。一度湯通しをして、たっぷりと水を張った鍋に加え弱火でコトコト煮る。この時に、ニンニク、唐辛子、ショウガ、長ネギの青い部分を加えておく。丁寧に浮き上がる脂を掬い取り、肉が柔らかくなったところにズッキーニを輪切りもしくは半月に切って加える。厚さは、二センチくらいであろうか。味付けだが、日本酒と淡口醤油(魚醤があればそれを用いると最高)と若干の塩。後は、好みで味醂とコショウ。出来上がったスープにゴマ油をたらせば中華風に早変わり。

このスープ、ズッキーニの代りに巨大化したキュウリもよく合うし、最近大流行のゴーヤ(苦瓜)を用いても素晴らしい。キュウリの瑞々しさを味わうのは、塩が最高だが、スティック状に切って、マヨネーズ、味噌、コチュジャンを均等に合わせゴマ油を加えて食すのも最高。勿論、糠味噌だけは絶対に欠かせない。浅漬けには、唸るほかない。


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