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今年で三年目を迎える我が体験農園は、今静かに眠っている。十二月中に全ての収穫を終え(本来なら、ネギ、大根、白菜などは年越しが出来るのだが…)、全くの更地にして堆肥などの基礎肥料を施し眠らせる。こうすることによって、たかだか二か月足らずの時間ではあるが、畑の地力が回復するそうである。こんな時、他所の貸し農園を見てみると、冬野菜である春菊とか小松菜、ホウレン草が青々と繁っている。この時期の緑の野菜は成長が遅いのだが、その分だけは味が濃厚で野菜が好きな方にはたまらない濃い風味である。

と、隣の畑ばかりを見ていても致し方ない。当方の畑は、三月の半ばになるとジャガ芋や里芋の種芋を植え、ホウレン草、小松菜、インゲン、結球レタスの準備を始める。三月の末から四月にかけてはパニクるほどの忙しさとなる。因みにその様子を申し上げると、先に準備したホウレン草と小松菜の種を撒き、その傍らトウモロコシ、ズッキーニ、大根、ルッコラ、ラディッシュ、インゲン、ゴボウの畑の準備。この畑の準備というのは、畝を作ったり基礎肥料を軽く施しマルチを掛けたり(透明または黒の地球に優しいビニールを掛けて、雑草の繁茂を防いだり、地中の水分の蒸発を抑える)するのである。そして二週間ほど後に、一斉にトウモロコシ、大根等々の種を撒く。同時に、トマト、キュウリ、ナス等の畑の準備。割り当てられた十坪の畑の脇に、五、六坪の変型の土地があり、その畑もお借りして、唐辛子を数種類植えている。

Kubota Tamami


とまあ、こんなところが春から浅い夏にかけての畑の準備なのだが、たかだか十数坪の狭い面積ではあるが、作物が一斉に実りだすといくら大食漢の僕ら夫婦でも食べ切れない。よく冗談に、玄関先に簡単な台でも設置して、無人販売をしてみようか、と言うくらい大量の旬の野菜が収穫出来るのだ。敢て、旬という言葉を使わせて頂いたが、野菜にも涙が出るほどにおいしい瞬間がある。例えば、デパートやスーパーで美しい野菜が売られている。が、こうした野菜の大半は、残念ながら本当においしい時期を一週間ばかり過ぎてから売られている。というのは、本当に柔らかくて味があって香りが豊かで感動的な旨さを持つ時に出荷すると、三〜四割の目減りがあるのだ。しかも、ある一定の形に慣らされてしまった我々消費者は、ややもすると出来損ないの野菜と判断してしまうのである。

最近テレビの番組で知ったことなのだが、道の駅などの野菜売り場に於いて、形の整わぬ大根だとかキュウリ、トマトが正規の料金の半額以下で売られており、それが大人気であるとか。僕に言わせれば、今頃気がついたのかという感である。自分で野菜を育てていると、少々曲がったキュウリでも歪のトマトでも、味に変わりはないのである。特にキュウリ等は顕著なのだが、一日収穫が遅れるとキュウリは一気に成長する。これは、市場等では規格外の大きさで、値がつかぬそうである。が、その位の大きさのキュウリの味は抜群に旨い。ただただ、流通の枠からはみ出したというだけで、商品価値がなくなってしまうなんてナンセンスだ。今後は、道の駅以外でも、規格外コーナーを設けて頂ければ、安くておいしい野菜が食べられるようになる。

と、二、三年野菜作りを続けていると、妙な知識だけはついて来る。といったって、理論や勉強だけでは旨い野菜は育たない。やはり、太陽と、雨と、よい土がないとおいしい野菜は育たないのだ。ということは、地球の御機嫌が悪くなれば、生物は生きて行けぬことになる。てなことで、なるべく地球温暖化を防ぐような、優しい無駄のない暮らしを再構築する時代がやって来たようだ。



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