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今、我が菜園(と言っても、体験農園)ではズッキーニの収穫が最盛期。体験農園の面積は一区画が十坪なので、ズッキーニは一か所だけしか与えられていない。とは言え、株が成長すると畳半畳位の面積を占める。この一株の収穫だけで、普通の人達は満足するのであろうが、我が家の消費量は桁外れ。とにかく、どんな料理にもズッキーニを用いるので絶対量が足らない。そこで、与えられた畑の横の空き地を使わせて頂いて、ズッキーニと消費の多いトマト、ナス、キュウリを特別に植えさせて頂いている。

そんな訳で、二株のズッキーニはほぼ毎日一本の収穫が望める。仕事の関係やら長雨で畑をのぞけない時には、ズッキーニはあっという間にヘチマ大の大きさに成長してしまう。だが食べてみると、意外なほどにおいしいのである。スーパーなどで売られているズッキーニは、どんなに大きくともキュウリ程度の大きさしかないだろう。この大きさであると、確かに柔らかくはある。が、香りや甘味というか旨味は大きいものの方が上である。ただし、間違いなく皮は固い。どうして大きいズッキーニを市販しないか、育ててみて初めて判ったことがある。大きくすればするほど、一本の実に栄養を取られてしまい、苗のダメージが大きくなる。従って農家の方々は、小さく育てて長く売る方を選択しているのだ。

Kubota Tamami
まあ、農家の事情はともかくとして、ズッキーニとトマト、キュウリ、ナスを適宜の大きさに切り、厚手の鍋にてオリーブ油だけで炒め煮にする。勿論、水分は一切加えない。加えるとすれば、ニンニク、ショウガ、セロリ、ピーマンといったところだろうか。弱火でトロトロやっていると、いつの間にかズッキーニをはじめとする野菜から水分が滲み出て、いい感じの野菜鍋が楽しめる。不思議なもので、塩分も一切加えないのだが、野菜に含まれているミネラルや僅かな塩分がよい塩梅に味を整えてくれるのだ。この料理こそがフランスの『ラタトゥーユ』であり、イタリア料理でいう『カポナータ』であろう。いずれにしても、多少の味付けには差があるから決めつけることは出来ないが、ズッキーニをはじめとして各種の野菜の旨味を味わえる素朴で素晴らしい家庭料理だと思う。

他に、ズッキーニを用いるイタリア料理にミネストローネがあり、これは檀家(だんけでだんかではない)では週一ペースで味わっている。他には、キッシュとして包み込んでも

格別だし、ただただオリーブ油で炒めて醤油とバルサミコ酢をたらしてもおいしい。体験農園の中でのズッキーニの評判というと、必ずしも評価は高くない。この事実は、偏にズッキーニの食べ方をご存知ないからだ。もう五年間くらいズッキーニを育てておられる方でも、未だにキュウリの仲間と思い込んでいる。先生が「これはカボチャの仲間です」と再三言っておられるのだが「糠味噌にしたらぶよぶよしてまずかった」とか「酢味噌をつけて食べても旨くない」という評価で、もったいないことに雑草などを放棄する穴の中に巨大化したズッキーニがゴロゴロと捨てられているのが現実。

お隣の韓国や中国でも、このズッキーニの仲間はよく食べられている。韓国では、テンジャンチゲの中には季節を問わず必ず入っているし、ジョンというお好み焼きに似た料理でも味わえる。また、中国では、少し大きめに育てたズッキーニを冬瓜と同じようにスープに入れて塩味で食していた。鶏肉か豚肉でスープを取った中に太めの半月に切ったズッキーニを入れ、甘味と旨味を出していた。そんなことで、我が家の味噌汁に薄切りのズッキーニを入れたら、これがすこぶるおいしい。夏の終わりによくカボチャの味噌汁を仕立てるが、これに勝るとも劣らない旨さであった。



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