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やはり地球温暖化が原因なのだろうか、今年は夏らしい夏日が余りにも少なかった。その影響で、野菜が高騰し庶民の食生活はとんでもないことになった。小松菜が二百五十円、レタスが三百円等々と通常では考えられぬ高値である。改めて、太陽エネルギーの重大さに気付くのだ。特に今年のような気象異常は、全世界の人々が真剣になってCO2対策に取り組まないと、増々酷いことになるに違いない。

僕が通っている体験農園の空き地に、ひゆ菜(バイアム)というアフリカ原産の植物が十数本育っていた。このひゆ菜、数年前に農園主が試みに植えたのだそうだが、誰一人食べ方が分らず一年で不採用になったそうである。ところが、アフリカ原産ということもあって、その生命力は逞しくいつの間にか野生化してしまったのである。

昨年、偶然にこの野菜に気が付いた僕は、その新芽を摘み取り台湾で覚えた腐乳(豆腐を発酵させたもの)炒めにしてみたら、相当においしかった。スープに大量に加えて煮込んでも、大変に柔らかく旨いとしか言いようがない程。煮込んだり炒めたりすると、仄かにネバネバとした食感があり、優しい旨味を与えてくれる。この植物は生命力が強く、いくら新芽を摘んでも、数日すると脇芽が育ちすぐ食べられるようになる。花が咲いて種が育つと、自然に枯れて行くのだが、身の丈が二メートル近くにもなる。黄緑野菜が不足がちの昨今、我が家の素晴らしい食材の一つ。

Kubota Tamami
アフリカ原産の野菜といえば、モロヘイアも負けず劣らず素晴らしい。
この野菜、最近はかなりポピュラーとなり、どこの野菜売場でも見かけることが出来る。一旦軽く湯通しをしてから刻み、小鉢に移して醤油、酢、鰹節などをかけて混ぜると、かなりのネバネバ感が出て、納豆と同じような感覚でご飯に乗せて味わえる。このモロヘイア、育てるのも至極簡単。堆肥の利いた土の上や、やや大きめの鉢でもすくすくと育ち、一本あれば週に一食は間違いなく食べられる。一度とうもろこしと一緒にかき揚げにしてみたら、もろこしの甘さとモロヘイアのネバ風味が見事に合体して、まことにおいしかったことを思いだす。

さて、冷夏であったとしても、夏が終わり虫の声が聴こえる頃になると、体力の消耗でへろへろになってしまった人も少なくない筈。こうした方々は、思い出したように訪れた残暑に体力を奪われたのではなかろうか。と、同時に、ビールの飲み過ぎや運動不足にも原因はあると思う。

そこで、この体力を補う為にも、大いにネバネバ食品を取り込み元気を取り戻そう。身辺にあるネバネバ食品と言えば、オクラも見逃すわけには参らぬだろう。オクラには、ガラクタンとかアラバン等の食物繊維が多く含まれており、これが体にはすこぶるよいらしい。勿論、ひゆ菜もモロヘイアも同じこと。他にも、ビタミンCや鉄分が多く含まれているらしいから、夏バテ対策にはもってこいの食材。

他に考えられるのが、トロロ汁。これも僕の大好物で、夏場から秋にかけての昼食には蕎麦とトロロのコンビネーションが欠かせない。我が家では、蕎麦を茹でて冷水でしめた後、器に入れてからすり下ろしたトロロをかける。蕎麦つゆは使わず、大根下ろしの汁を捨てずにかけ入れて醤油で味を整える。薬味は刻みネギと青シソと鰹節。とろ味が強すぎる場合には、蕎麦を茹でた蕎麦湯で薄めて調整する。この中に、梅干しを加えるのも中々よい。

と、ネバネバとしたものを羅列したが、他にも納豆、メカブ等といった食材があるだろう。これらを上手に食卓に取り込み、軽い運動をしようと、自分に言い聞かせている。


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