奥琵琶湖は湖北平野、天正年間の合戦で知られる賤ヶ岳の山懐にある《想古亭源内》は湖北路の一軒宿。十七代続く名家であり、田園風景の中に建つ趣き深い茅葺の母屋は、なんと初代の時のままだという。

「季節の無い食べ物は使わない」、「ハイカラな料理はするな」、「本当の田舎の味を食べて頂け」を家訓とする同宿で供される料理は、湖の魚、季節の山菜、そして蕪や大根、葱など地元の野菜類を使った、素朴ながら特色のある献立。米は近江産コシヒカリを自然乾燥させて使い、醤油、味噌、豆腐、こんにゃく、漬物などは手作りである。

写真は野菜を中心とした朝食。間引蕪、高野豆腐、椎茸などの旨煮、小鉢は蓮根きんぴら、白菜の間引菜浸しの二種、茶碗蒸し、里芋と油揚げの味噌汁、自家製の梅干し、らっきょう、沢庵。そして御飯は、客の目の前で土釜を使い、二人分ずつ炊き上げる。

四季折々の風情を愛で味わう名宿である。
■写真提供:《想古亭源内》
滋賀県伊香郡木之本町大音1528
TEL.0749-82-4127