傷付いた雁が泉流に浴していたことから発見された岩室温泉。以来、北国街道の宿場町として、また越後一の宮・弥彦神社の参拝者の遊里として栄えてきた。《綿綿亭綿屋》は安永年間(一七七二〜)に開業。海、山、里の豊かな自然が満喫できる安らぎの宿である。

写真はコース料理『慈(いつくしみ)』、初夏の一例。手前は『八寸』、鮎寿司、南蛮海老の素揚げ、合鴨肉の旨煮、結び鱚(きす)の雲丹焼き、鮃のすっぽん寄せ、薩摩芋の蜜煮、枝豆。右の籠は『揚げ物』、丸茄子の素揚げ、削り節、獅子唐辛子。奥は鉢盛りの『焼き物』、カマスの塩焼き、梅の甘煮、蓮根の酢漬け。また日本酒『冬妻(ひよつま)』は、同館当主が味を調整した特注品。男性・女性、各々の嗜好の中間を目指した風味で、岩室温泉オリジナルの吟醸酒である。

因みに冬妻とは、岩室近隣の地名で、名水とされる清水が湧くことで知られる。毎年六月下旬には、数千匹の源氏蛍が乱舞する幽玄な光景が繰り広げられるという。
■写真提供:《綿綿亭 綿屋》
新潟県新潟市岩室温泉581
TEL.0256-82-2030(代)