口に含めばトロリととける口あたりの柔らかさ。天和元年(1681)創業の《松翁軒》は、この長崎カステラの特徴を創り上げた元祖。写真は、300年以上作り続けられている代表的銘菓『カステラ』と、明治中期に創製された『チョコラーテ』である。

カステラの材料は、保水性に優れた特殊な専用小麦粉、鮮度・味・黄身の色まで厳しく管理され島原半島の契約農家から直送される玉子、糖度が高いザラメ、色良く甘味に濁りが無い国内産の餅米飴。季節や温度などにより、材料の準備から焼き方に至るまで製法が微妙に異なってくるため、玉子割りから焼き上がりまでを、熟練の技術と勘を持つ職人が一人で担当する。効率とは無縁、手間を惜しまず、一人一つの釜で一枚ずつ丁寧に焼き上げることで、創業以来のしっとり、ふんわりとした長崎カステラが出来上がる。

ポルトガル人がもたらした南蛮菓子は、長崎の菓子職人たちのたゆまない研鑽によって、今や日本を代表する名菓となっている。

写真提供:《松翁軒》
長崎市魚の町3-19
TEL.095-822-0410