泥鰌の旬は初夏から秋。脂がのり骨が軟らかく、ビタミン類、蛋白質とも豊富である。

生きた泥鰌を酒の中で泳がせると、腸呼吸をするため腸全体に酒が回る。これを味噌仕立ての汁で煮込むと、臭味が消え味がまろやかになり、身がふっくらして骨も一層軟らかくなる。これが享和元年(1801)創業の老舗《駒形どぜう》独自の下拵えである。

この泥鰌を鉄製の鍋に並べ、鰹出汁がきいた割下を注ぎ煮ながら食す。同店独自の形状の浅鍋は早く煮えるので、度々割下を注ぎ足すことで、最後まで変わらぬ味を楽しめる。また、傍らに用意されている葱は、薬味のみならず、たっぷりと鍋に入れると泥鰌のカルシウム成分がリン酸カルシウムとなり、より体内に吸収され易くなるという。好みにより七色唐辛子、山椒を振り、熱々を次々に頬張る。飯に良し、酒に良しの逸品である。

店主曰く“江戸のテーマパーク・2時間駒形ランド”。昔日と現代を繋ぐ、風情ある建物と伝統の美味を味わいに、浅草へどうぞ。
写真提供:《駒形どぜう》
東京都台東区駒形1-7-12
TEL.03-3842-4001(代)