「どらやき」はポピュラーであるが、本当に美味しいどらやきはファンが多い。材料と丁寧なつくりにこだわった《函館千秋庵総本家》のどらやきもそのひとつで「どらやきの逸品」である。函館を中心とする道南地方の大納言を使い、今も三日間かけて丁寧に粒あんに仕上げている。

皮は手間のかかる「宵ごね」で生地を仕込み一枚一枚手で蒸し焼きにしてつくる。そんな同店のどらやきは、「甘くても、甘く感じない」という粒あんがきっちり詰まっているので中央がこんもり盛り上がった形をしていて、皮のしっとり、ふかふか感がまた絶妙である。

《函館千秋庵総本家》は函館が開港した翌年(万延元年・1860)の創業。六稜の雪華にスキーを履いた熊が鮭を背負っている姿が浮き彫りになった名物煎餅「元祖 山親爺」、江戸時代函館の繁栄の基礎を築いた豪商、高田屋嘉兵衛の北前船を刻印した「高田屋嘉兵衛最中」など、地元にこだわり菓子を作り続けている老舗銘菓店である。

■写真撮影:《函館千秋庵総本家》函館市宝来町9-9(本店)
TEL.0138-23-5131