島崎藤村を始め多くの文人墨客に愛された創業120年という文豪の宿《皆美館》の名物である。江戸・文化文政のころ、茶道に通じ、粋人として知られた松江藩七代領主・松平不昧公は、「汁かけご飯」を好まれたという。用人たちが長崎や平戸に赴き、オランダ料理を持ち帰って、公に献上したところ、公はこれを公好みにアレンジして和風の御殿料理に仕立てたのが始まりだといわれる。《皆美館》の初代板前長・西村常太郎がこの料理法を基に家伝料理として、「鯛めし」を考案し、以来脈々と伝承され「不昧公好み皆美家伝鯛めし」と名づけ、平成10年には商標登録を取得し、《皆美館》だけに伝わる名物料理となっている。

温かいご飯の上に鯛そぼろを乗せ、さらに薬味を盛って、薄口のだし汁をたっぷり御茶漬けのようにかけて食す。あと味になんとも言われぬ香気が楽しめる。白砂青松の日本庭園と宍道湖を眺めながら雅趣の味を堪能したい。

なお、《日本橋 皆美》、《皆美 大阪店》と、本年9月13日移転オープンの《銀座 皆美》でもこの美味を味わうことができる。

■撮影協力:《皆美館》島根県松江市末次本町14
TEL.0852-21-5131(代)