《坂本屋》は明治27年創業。市内唯一の本格和風旅館で、長崎の人情溢れた料理ともてなしが評判の宿である。ここで楽しめるのが伝統の味わい「長崎卓袱(ながさきしっぽく)」。

鎖国時代、唯一門戸を開いていた長崎。南蛮船が渡来し、様々な国の人たちが大勢住み付き町にはエキゾチックな雰囲気が漂っていた。異人との交流の中、長崎の女性たちは懐かしい各国料理でもてなしたと言う。それが後に日本料理と融合し「長崎卓袱」と呼ばれるようになった。写真下にある鯛の上身と小さな丸餅が入った熱々の吸い物を、「御鰭(おひれ)をどうぞ」と最初に女将から差し出される。これには大歓迎の意が込められているという。円卓上に勢ぞろいするのは、刺身、酢の物、和え物、豆蜜煮などの小菜、中鉢には同館名物の豚の角煮「東坡煮」が、そして大鉢には山海の幸の盛り合わせと優に十を越える皿が豪華に並ぶ。料理は季節、予算によって変わる。また、別館の食事処「三昧」では、自慢の東坡煮や角煮めしを一品料理として楽しめる。

■写真提供:《坂本屋》長崎市金屋町2-13
TEL.095-826-8211