《柴舟小出》は創業1917年の古都・金沢を代表する菓子舗で、その代表商品が銘菓「柴舟」である。加賀藩の頃から名物として庶民に親しまれていたという煎餅を、創業当時から「柴舟」として取り組み小売りを始めた。

戦後まもなく、二代目小出弘夫氏は煎餅を生姜蜜に潜らせ乾燥させるという旧来の単純な製法を一新して、小麦粉と砂糖で焼き上げた舟形に反った楕円形の煎餅に、生姜蜜を煮沸して冷却し、摺り、再び湯煎をして熱をかけ、蜜に戻し、仕上げに煎餅一枚一枚に刷毛で表面を化粧引きするという、非常に手間のかかる方法を考案し発売した。この方法により、口当たりも軽く、色艶も美しい姿になり、現在の人気商品「柴舟」が誕生したのである。ピリッと利いた生姜の風味とその素朴な姿は他に類を見ない。

その「柴舟」の名の由来は、朝霞の中、芝を摘んだ舟が川を下る姿を写したところからだといわれる。金沢の由緒深い人気のお土産品である。洗練された伝統の味を楽しみたい。

(撮影:古屋 博)

■撮影協力:《柴舟小出》金沢市横川7-2-4
TEL.076-241-1454(代)