7月にはいると、京都は祇園祭である。祭のご馳走として鱧(はも)が振舞われるため、鱧祭とも。その昔、京都は海から遠く、新鮮な海の魚が食べられなかったが、生命力の強い鱧だけは例外であった。そして、小骨の多い鱧を食べるため苦労を重ね、骨切りという技が生まれ、料理人の技も磨かれたという。祇園祭の頃は、京都は蒸し暑さも格別で、鱧の料理もサッと湯引きして、冷水で冷す「鱧の落し」など涼しげなものが多い。
左上は、海苔で巻いた木の芽ご飯の上に、骨切りした鱧の照焼をのせた「鱧の鮨」。中央手前は氷の上に、星鰈の刺身、鱧の焼霜、イカの刺身、蒸し雲丹を盛った「氷鉢」。山葵と莫大海、茗荷が添えてある。右は骨切りし、葛叩きをして湯がいた鱧と椎茸、じゅん菜、管ごぼう、梅肉を合わせた「鱧のお椀」である。
鱧をサクサク、コリコリ、ふわふわと異なった食感で味わえる「鱧尽くし」である。京都の老舗で修業したという山本料理長の鱧料理は本物である。蒸し暑い時節、鱧の生命力にあやかりたいものである。

(撮影:古屋 博)

■撮影協力:《とゝや魚新》
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