“日本料理は器で食べさせる”といわれるほど器が大きな役割を果たす。料理と食器の調和が日本料理の特色でもある。特に夏の暑い盛り、氷の上にお造りを盛ることはよくあるが、ここでは氷そのものが器であり、その中にお造りを盛っている。清涼感の極みである。丸い氷の器には、ヒラメ、赤貝、烏賊、トロ、車海老が、左奥の四角いガラスの器には、蒸鮑、じゅん菜の酢漬、白ダツ、焼ポテト黄身バター餡、天魚(アマゴ)南蛮漬が盛られている。

ここ 《仙郷楼》では、食の匠・安藤正好料理長の手による献立が毎月変わる。日本料理のフルコースである。食前酒、先付け、前菜に始まり、椀物、造り、煮物、焼物、中皿、揚げ物、変り鉢、ご飯、香の物、留め椀とつづく。〆の水菓子は、地元のパティシエによるケーキと季節のフルーツである。

季節を先取りした地味豊かな食材、匠の手による料理は、目も口も楽しませてくれる。食事は朝夕とも部屋でゆっくりと楽しめる(東館朝食除く)。
■撮影提供:《仙郷楼》
足柄下郡箱根町仙石原1284 TEL.0460-84-8521