カステラの製法は、元亀2年(1571)から長崎に居着いたポルトガル人により伝授された。口に含めばトロリととける口あたりの柔らかさという、長崎カステラの特徴を創りあげた《松翁軒》は、天和元年(1681)の創業である。

カステラの材料は、保水性に優れた特殊な専用小麦粉、鮮度・味・黄身の色まで厳しく管理された島原半島の契約農家から直送される玉子、糖度の高いザラメ、色よく甘味に濁りが無い国内産の餅米飴。

季節や温度などにより、材料の準備から焼き方に至るまで製法が微妙に異なってくるため、玉子割りから焼き上がりまでを、熟練の技術と勘を持つ職人が一人で担当する。

効率とは無縁、手間を惜しまず、一人一つの釜で一枚ずつ丁寧に焼き上げることで、創業以来しっとり、ふんわりとした長崎カステラが出来上がる。

ポルトガル人のもたらした南蛮菓子は、長崎の菓子職人たちのたゆまない研鑽によって、今や日本を代表する名菓として受け継がれている。

■写真提供:《松翁軒》長崎市魚の町3-19
TEL.095-822-0410