《豊島屋》の創業は明治27年、当時、鎌倉はハイカラな町であり、そこで、初代が創作したのが、今、全国にその名を知られる銘菓「鳩サブレー」である。

《豊島屋》本店は、鎌倉・鶴岡八幡宮の参道・若宮大路に溶け込むようにある。
店に入ると、「鳩サブレー」、「小鳩豆楽」はじめ「きざはし」、「段葛」、「谷戸歩き」、「鎌倉五山」、「雪ノ下」など、古都・鎌倉に由緒あるお菓子が数え切れないほど並んでいる。また、四季折々をテーマにその時節に因んだお菓子も彩りを添えている。

表紙は、薫風が緑の鎌倉をやさしく撫で、五月晴れの空には鯉のぼりが舞い、足許水辺にはあやめが咲き匂う。そんな風情を羽二重求皮で包み上げ、ちょっと黄色餡を添え「あやめ餅」と名付けられた鎌倉の初夏の香りただよう上菓子である。

鎌倉を散策するには絶好の時節、本店の裏に「八十小路」という甘味と軽食が楽しめる洒落た菓寮もある。

《豊島屋》神奈川県鎌倉市小町2-11-9
TEL.0467-25-0810(代) 撮影:古屋 博