八橋検校(やつはしけんぎょう)は江戸時代前期、筝曲を極め、多くの名曲を残して近世筝曲の開祖と讃えられた。歿後、黒谷の常光院には墓参が絶えず、四年後の元禄二年(1689)、検校の遺徳を偲んで琴に似せた干菓子を「八ッ橋」と名づけ、黒谷の参道である聖護院の地にて売り出した。これが、八ッ橋の始まりという。

聖護院八ッ橋総本店は、以来321年間、八ッ橋を製造し続け、昭和中期には、生八ッ橋でつぶあんを包んだ三角形の「聖(ひじり)」を誕生させ、京都の代表的な土産物として多くの人に愛されてきた。

八ッ橋とは、「米粉と砂糖を合わせたものににっきで香り付けをしたもの」という定義を守りつつ、納涼のひんやりとした味わいを楽しめるよう、従来の原料に寒天を混ぜ、冷して食べられる夏の生八ッ橋が生まれた。この生八ッ橋でこしあんを包んだものが「聖涼(せいりょう)」である。

「聖」ならではの風味と、独特の食感を、夏の涼みにどうぞおためしを。
《聖護院八ッ橋総本店》 京都市左京区聖護院山王町6
TEL.075-761-5151 写真提供:聖護院八ッ橋総本店