創業百二十余年、島崎藤村はじめ多くの文人墨客に愛され、文豪の宿として知られる《皆美館》には、茶道に通じ粋人として知られた松江藩七代領主・松平不昧公が好んだといわれる「汁かけご飯」をアレンジしたという「家伝・鯛めし」をはじめ、四つの名物・家伝料理がある。

表紙の「家伝料理・鰻のシャク(鶸)もどき」もその一つ。昭和初期までは寒い季節になると、伯太川河口(安来市)辺りから飛来するシャクという鳥が獲れ、脂濃く大変美味で其の料理は好評だったという。しかし、その後このシャクは禁猟となり、絶滅したとも言われている。

そこで、シャクの料理を復活しようと、宍道湖七珍の一つ、ウナギの蒲焼の美味さがシャクに似ているということから、シャクの代わりとして、ウナギと季節の野菜などを炊き合わせた料理を創案、「鰻のシャク(鶸)もどき」と名付け、家伝料理として好評を博している。《日本橋皆美》、《銀座皆美》、《皆美大阪店》でもこの家伝料理の雅趣を味わうことができる。
《皆美館》松江市末次本町14
TEL.0852-21-5131(代)  写真提供:皆美館