江戸時代、越後村上藩は三面川(みおもてがわ)を舞台に世界で初めて鮭の増殖を成功させた。途絶えかけた鮭は見事に復活。鮭は天からの恵みだという感謝の気持から、余す所なく使う鮭料理が生まれ、現在も村上には100種類の鮭料理が伝えられている。

この中でも代表的な鮭料理が、塩引き鮭と鮭の酒びたし。11月に入り気温が10度を割り込むと仕込みの始まり。塩を引いた鮭を、北西の冷たい風に当て3週間ほど熟成させる。村上の気候風土の中でアミノ酸発酵をおこし、村上でしかできない独特の旨みが生まれてくる。

鮭の酒びたしは、塩引き鮭を更に一年がかりで熟成させて造る珍味で、冬の寒さで乾きが進み、春の暖かさで発酵が進む。梅雨の湿り気で一味枯れ、その後、夏の暑さ、秋雨の湿り気を経て、秋晴れの乾きを待ってようやく完熟する。ドイツのグルメたちが世界中の魚貝の加工品を集めビールを飲んだとき日本の鮭の酒びたしが一番旨いと絶賛した味の芸術品。

《味匠 喜っ川》新潟県村上市大町1-20
TEL.0254-53-2213 写真提供:喜っ川