小鯛雀鮨で知られる《すし萬》は、長い歴史をもつ。承応2年(1653)頃、河内屋長兵衛が魚屋として開業、副業として江鮒(ボラの子)の雀鮨をつくっていた。天明元年(1781)小鯛雀鮨専門店を創業。その頃、京都の宮廷に雀鮨を献ずる機会に恵まれ、それまでの褐色の江鮒から材料を吟味し、小鯛の二歳ものに変えたところ味も見かけもよくなり大変な評判を得たという。これが今も愛される味「小鯛雀鮨」であり、《すし萬》の原点である。

表紙の「柳すし」は、大正14年、13代目萬助が松前寿司に対して鯖の棒ずしを改良し、皮のつけ方の姿から、柳ずしと名づけて売り出した、京都の鯖ずしの小型のものである。以前は、黒板昆布で巻いていたが、“出し”が濃く、すし本来の味を損ねるので、現在は白板昆布で巻く様になった。約360年の伝統と、日々の創意から生まれた美味を堪能してみては。
《小鯛雀鮨 鮨萬》大阪市西区靱本町2-3-7
TEL.06-6448-0734 写真提供:すし萬