山の芋、あずき、粳米、鶏卵、抹茶それに阿波(あわ)特産の和三盆(わさんぼん)糖などで作る蒸し菓子「小男鹿」で知られる四国・徳島の老舗菓子舗《冨士屋》。

和三盆糖は、徳島県と香川県の一部に産する唐黍を原料に安永年間より変わらぬ製法を守り続けている。表紙の『霰三盆』は、吉野川の真砂にも似たひなびた霰状の、純和三盆製のお干菓子。ふわりととろけるなごやかな自然の甘味は、故郷の山川、幼き日の母の懐を思い起こす味とも感じられる。忙中閑のひとときコーヒーや紅茶に入れて、またお茶の合間に摘まむのもよい。

容器にも感激がある。阿波藍(あわあい)の和紙の化粧箱には「霰三盆」の木版の文字。蓋を開けると、薄い杉板を桜の皮で留めた曲物。焼印が押され、藍の和紙で封印されている。糸を引くと開封され、霰三盆が現れる仕組み。贈り物としても人気がある。

■冨士屋
(本店)徳島市南二軒屋町1-1 TEL.088-623-1118(代)