JR神田駅北口近くの老舗のそば店《神田尾張屋本店》の『冷しきつね』は、毎年常連のお客様がその登場を待ちわびるという、ボリューム満点、昭和から続く夏だけの人気メニューである。
そばが隠れてしまうほどたっぷり盛られた具材は、紅しょうが、錦糸卵、キュウリの細切り、甘辛く煮付けた油揚げの細切り、そして特徴的な油炒めのキャベツ。これがしんなりとしながらもシャキッと心地よい歯ごたえで、そばとの相性も絶妙。
そばは信州産、北海道産をブレンドしたそば粉で手打ちする二八(そば粉8、小麦粉2)、つゆは出汁の旨味が生きる濃いめ、重めのやや甘め。これらは1923年の創業当時からずっと変わらないという。
味わいは本物。だが、かしこまったそばと一線を画す、親しみやすくて大らかな、いわば「昭和の味」。この夏、ぜひ味わいたい一品である。
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